講師を務めた鵜飼教授は、かつての自宅が鍍金工場にあり、毎朝バフ研磨の音で目を覚ましたという経歴の持ち主で、現在ではものづくりの現場をていねいに観察しています。平成21年8月3日の「経済混乱期のものづくり中小企業」に引き続き、2回目の講師担当となります。

▲今回、講師をつとめた鵜飼信一教授
講座では最初に、鵜飼教授が米国の主要新聞であるニューヨーク・タイムズより取材があった旨を述べ、問題となっているトヨタ自動車がらみのトラブルについて説明しました。鵜飼氏によると、そこには「日本発の生産システムが米国で適用するには無理があったこと」「動かしてみないとわからないソフトウェアの問題」の二点があるといいます。
引き続き、鵜飼氏が日刊工業新聞で週一回連載している「モノづくりの光景」を参照しつつ、日本の製造業はどのような課題を抱えているか、製造業の現場である中小企業はどのような取り組みを見せているか、などについて、特に町工場の現状を踏まえながら説明しました。具体的には、以下のようなトピックが挙げられました。
・日本の製造業を担う中小企業は、経営者が先頭に立ち“家族”として経営を行っている。
・86歳になってもプレス加工を毎日休まず続ける現役の従業員もいる。まさに、ものづくりにおける「勤労の精神」を体現しているといえる。
・町工場の従業員には地方の農村出身者が多いが、手の指がごつい人が多い。修行の過程で指が“道具”のひとつになった証だろう。
・台東区にある東京芸術大学工芸科の教室はまるで町工場のようで、実技重視の教え方になっている。芸術的創作への取り組みとなれば、若い人もたくさん入ってくる。
・工業や工芸は「身体化された知識」で勝負しているという共通点がある。いずれも「見たり 聞いたり ためしたり」を繰り返して技術修得、開発していくものである。
鵜飼教授は最後に、日本の大企業に倒産が多いことをあげたうえで、日本の小さい企業の強みとして、経営者と社員が家族同然に一体となって製造開発に取り組んでいることをあげ、いわば経営者の総合体として機能していると指摘しました。そして「経営とは人に賭けること」であり、これを実現しているのが、ほかならぬ日本の中小企業だと語りました。
鵜飼教授がときおり個別の参加者と直接会話を交わしたりするなど、アットホームな雰囲気の中で進みました。出席者は35名にのぼり、墨田区内の製造業従事者が多数を占めました。

▲会場は盛況で、多数の写真を使った説明に参加者は興味津々でした
講座終了後に行われた懇親会では、鵜飼教授および参加者、また参加者相互の間で活発な意見交換や情報交換が行われ、中小企業経営者の意欲と熱意がうかがえました。
|